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2、マイクロプラスチック、何がどう問題なのか

今回のレポートでは、マイクロプラスチックが具体的にどのような影響を与えるのか、魚、人間、海それぞれお伝えします。

水中写真 海底 海中イメージ wtr0053-024

 

1.魚

環境省「中央環境審議会環境保健部会」2016によると、

マイクロプラスチックは、PCB(ポリ塩化ビフェニル)などのPOPs(難分解性、高蓄積性、有害性を持つ物質)を吸着することがわかっています。

さらに、ダイオキシンDDTなどの有害化学物質を取り込みやすいことが分かってきました。

このような有害物質が付着したマイクロプラスチックを食べたプランクトンを小魚が食べ、さらに大きな魚が、小魚を食べるといった食物連鎖によって、有害物質が魚の体内で濃縮され蓄積されていきます。

そして、その大きな魚を食べるのが、他ならぬ人間なのです。

 

2,人間

マイクロプラスチックを食べた魚を食べた人間の体ではどんなことが起こるのでしょうか。

マイクロプラスチック自体は、そのまま排泄されます。という意見もありますが、

環境省水・大気環境局水環境課海洋プラスチック汚染対策室の報告によると、マイクロプラスチックは、消化器官を超え、体の様々な部分に移行していることがわかりました。

2.2.2. 生体内におけるプラスチックの消化管以外の組織への移行

ポリエチレン製のマイクロプラスチックが 3 種のニシン科の肝臓に移行した。肝組織からマイクロプラスチックを分離し、肝臓を凍結切片化し、偏光顕微鏡で観察した結果、カタクチイワシ属の一種(Engraulis encrasicolus)の 80%が肝臓に 124 µm から 438µm の範囲の比較的大きなマイクロプラスチックを含んでいた。これは高レベルの汚染を示している。 肝臓中で確認された大きな粒子は、小さな粒子の凝集によって生じていたか、あるいは腸壁をそのまま通過した可能性がある(Collard et al. 2017
68)。
・4 種の底生及び遠洋の魚(コチ科の一種(Platycephalus indicus)、エソ科の一種(Sauridatumbil)、モトギス(Sillago sihama)、コウライアカシタビラメ(Cynoglossus abbreviatus))の腸(消化管)、皮膚、筋肉、鰓及び肝臓と、クマエビ(Penaeus semisulcatus)の筋肉から、マイクロプラスチックが合計 828 個検出された。検出されたマイクロプラスチックは繊維状のものが主であった。調査した 5 種はどの種も広範囲の大きさのマイクロプラスチックを摂取していた。特に、コチ科の一種、モトギス、 クマエビでは 100~250 µmのプラスチックの摂取が多く、コウライアカシタビラメ及びエソ科の一種では 250~500 µm の摂取が多かった(Abbasi et al., 201869)。
・球状ポリスチレン(4~16 µm、0.51 g/L)の生体内蓄積と毒性のメカニズムをイガイ属の一種(Mytilus edulis)を対象に調査した結果、ポリスチレンは腸から循環系に移行し、血リンパ中で 48 日間以上保持された。その濃度は 12 日後に最大となり、その後減少した。小さい粒子ほど組織内の蓄積ポテンシャルが高かった (Browne et al., 2008
70)。 

マイクロプラスチック自体は、消化されずにそのまま排泄される、という意見も見られますが、このように、肝臓や筋肉、血リンパ中にも保持されていたという結果が出ています。

魚での結果ですが、人間でも十分に可能性のあることだと思います。

また、検出されたマイクロプラスチックが繊維状であったことも気になる点です。

さらに同報告書には、マイクロプラスチックの毒性として、以下の実験結果を報告しています。

2.3.1. 実験室での実験
・観測された影響は、経口摂取されたプラスチックによって消化活動が物理的に阻害されることに起因する機能不全(摂餌の減少、体重の減少等)がほとんどである。その他の影響としては、ファゴサイト活性の増加、リンパ系への移行、配偶子の質の低下、胚発生異常の増加、遊泳行動異常、運動能力低下、捕食能力低下、発現遺伝子の変化が報告されている。これらはプラスチック摂取後に腸以外の器官に移行した可能性を示している(GESAMP, 201659)。

このように魚に影響が及んだことは当然人間にもあり得ることです。

 

3.海

マイクロプラスチックが有害物質を付着させた状態で、海を漂い、海洋汚染を広げる運び屋となっています。

自然が守られてきた、ガラパゴス諸島カナリア諸島といった地域においても、マイクロプラスチックに吸着したPCB濃度のデータが報告されています。

 

出典:海洋プラスチックごみに関する既往研究と今後の重点課題

(生物・生態系影響と実態)

令和 2 年 6 月
環境省水・大気環境局水環境課海洋プラスチック汚染対策室

 

 

マイクロプラスチックの影響は、想像していたよりも深刻でしたし、いまだ研究段階で分かっていないことも多いことがわかりました。

 

次回のレポートでは、プラスチックごみが海に放流される原因を調べます。